南京事件と砲艦サンパブロ
実は唐代以降はかなりわかっている史実が多いので書き出すとかなりの量になってしまいます。ですからやはり飛び飛びに興味の赴くままに飛び飛びに書き、それをあとでHPの方に移し、加筆していこうかと思います。学者ではありませんので、あくまで主観的に色んな物語を読んだり、映画を見たり、漫画を読んだりし、それと史実とされていることの比較をしていこうと思います。途中でくじけないようにするためには皆さんの応援が必要です。よろしくお願いします。(応援とはコメントやトラックバックをくれなくても、読みにに来てくださいということです。このシリーズ結構色んなところから見に来ていただいているのは私には解っておりますから続けているのです)
今朝、起きてたメールチェックをして、返事を書いて、またまTVをつけたらなんと懐かしい「砲艦サンパブロ」(1966年 ロバート・ワイズ監督)をWOWOWでやっているではないですか!!3時間を越す大長編(あの時代ですからインターミッション付きですよ!)
えっ!中国史と何の関係があるのと思ったあなた、この映画みてないでしょ!
3時間の戦争物のハリウッド映画なんか見たくないわ、と思ったそこのあなた、
問題は長さやジャンルではないのです(ジャンル分けしたら戦争物ということになってしまうから始末に負えない、ノンジャンルですよ)もしくはどの国の映画かじゃないんです(ハリウッド映画嫌いも納得させられる映画です)。問題は中身です。
南京事件や蒋介石、毛沢東なんかはもう歴史上の事件や人物だと思っているでしょう。でも違います。この時代から現代は実はシームレスに繋がっているんですよ。この時代を実際に知っている人はまだ生きているのです!!
南京事件は1927年(昭和2年の出来事です)
孫文が清を打倒し中華民国を立てたのが1912年(明治45年=大正元年)です。
そしてそれから14年後中国はまた分裂の時代に入る兆しを見せ始めます。
たとえば春秋戦国時代は地域限定ですが、大航海時代を経て中国も誇らしげにその周辺の版図だけを見ていればいい時代は終わりを告げ欧州ともアメリカやロシアともさらにはアフリカや中南米とも付き合わなければならない時代の幕開けだったのです。
1921年に中国共産党が結成され、南京事件のあと1927年に毛沢東が革命根拠地を作り本格的な旗揚げをします。
整理しますと
西欧(特に米英)列強国は基本的に中国に代表される東アジア地区は単なる野蛮人の住む搾取するための地域と考えているということ。民主共和制(米国)、立憲君主制(英国)は基本的に共産主義/社会主義(当事のソヴィエト連邦やいわゆる東欧諸国)とは相容れない。
日本との関係で言えば、孫文らが日本で旗揚げし対清運動をスタートさせたのは有名な話です。その当事日本は明治維新の混乱を乗り越え大正デモクラシーの時代を迎え、不完全ながらも立憲君主制国家となり、男子普通選挙法も行われていた時代の少し後です。まだ国内は平和な時代ですが、列強と並びたい超えたいと富国強兵政策をとっていました。
そして先ほど不完全な立憲君主制と申しましたが、国会はあるけれども、天皇はその決定を覆すだけの権限が与えられるという不完全さをもっていたのです。
英国のように「王君臨すれども統治せず」が完全な立憲君主制でそれは基本的には協和制(アメリカ)と同じものなのです。(今の日本は分類でいくと「民主共和制」の国ではなく、「立憲君主制」の国なのですよ…いまだに。)
ですから、天皇を傀儡となせば容易に軍事独裁政権が誕生してしまう体制だったのです。その欠陥がもう少し後に日本の大陸支配~第2次世界大戦へと繋がるのですが…。
ちょっと横道にそれましたが、中国はほんの少し前に帝政から脱却し(これが孫文らの辛亥革命です)民主共和制に移行したばかりでまだ基盤が安定せず、色んな勢力の寄せ集め的な状態にある。しかし列強の支配からは逃れたい。おまけに、共産主義を主張する毛沢東らが台頭してきており、小競り合いが方々で起こっている。
まさに、中国の周辺は一触即発の状態です。
南京事件はそんな中、国民革命軍の蒋介石将軍らが南京を占領したとき、一部の反帝国主義者の軍人や民衆が外国の領事館や居留地などを襲撃し破壊などの残虐行為を行い、米国人、英国人、日本人ら数名の死者=列強国の被害者を出してしまうのです。
これで日本を含む列強国に中国を攻撃する材料を与えてしまうのですが…。
そういう歴史的背景を踏まえてみたらどんなにすごい映画なのかが解ります。
「砲艦サンパブロ」そんな背景の中(南京事件の少し前)、中国の長江(揚子江)周辺でのアメリカ人の安全を確保するという任務を背負って、長江流域の内陸の町「長沙」に駐留しているのですが…。
(つまり人道的な任務についているので発砲は一切許可されていないのです)
そこに主人公のホルマン一等機関兵(スティーヴ・マックイーン)が赴任してきます。
正義感の人一倍強い彼は、他の乗員とは余りなじめない性格なのですが、フレンチー(リチャード・アッテンボロー)とは馬が合う。そしてまだキャンディス・バーゲンも重要な伝道学校の教師の役で登場します。
昔からとっても好きだったキャンディス・バーゲンです(わー久しぶりに若くて綺麗なキャンディス・バーゲンをみてしまった。)
そして、俳優時代のリチャード・アッテンボロー、大脱走の時もスティーヴ・マックイーンと競演していました。そして後にあの名作「ガンジー」を撮りアカデミー監督賞を獲得するイギリスの名優であり大監督です。
スティーヴ・マックイーンは説明不要でしょう。
当然上記のような背景ですから中国人はアメリカ人のことを良く思っていない。反感を丸出しにしている。アメリカ兵の大半は中国の女性を性欲処理の対象としか考えない。男はただの貧相な野蛮人と思っている。
しかし、ホルマンは機関室の無知な中国人に丁寧に機関の動作の原理から操作方法を熱心に教えようとし、ついには友情さえ感じ始める。
そして、親友のフレンチーは酒場で働く中国人の女の子メイリーをアメリカ兵やアメリカの民間人の性欲処理の対象から必死で守りを真剣に愛するようになる…。
そんな中、南京事件勃発のニュースがサンパブロにも飛び込んでくるのです。つまり発砲許可目前状態になるのですが…。(これ以上はネタバレはしません)
実はこの機関室の無知な中国人を演じているのは「岩松信」=Mako Iwamatsuという日本人のハリウッド俳優なんです。この作品でアカデミーの助演男優賞の候補になっていますが、残念ながら今年(2006年7月)お亡くなりになられたました。謹んでご冥福をお祈りいたします。
また、この酒場の女の子メイリーをやっているマラヤット・アンドリアンという女優さんすごく東洋的な美人で、私流には「切なくて可愛い」のですが…。実はタイ人でフランスの外交官と結婚してあの、『エマニュエル夫人』を書くエマニエル・アルサンなんですよ!
作品全体はやはりハリウッド映画の仕立てで作ってありますので、アメリカ人の眼から見た中国が描かれているのです。しかしその東洋人を見る眼は温かく、多くのアメリカ人を見る眼は冷徹です。人道主義的で、ナショナリズムを否定し、人間としてのアイデンティティーにエールを送る映画になっています。3時間はあっという間に過ぎてしまいます。
この作品が作られた1966年はベトナム戦争の最中です。その時代背景も頭に入れつつそして上に書いたような背景(つたない説明ですが)映画を見てください。
(このベトナムですが中国では南越と書き秦~唐まで中国の領土だったのです。そして三国時代には呉の一部となるのです。今度ベトナム戦争や朝鮮戦争のことも書こうと思っています。ベトナムも中国の一部だったし朝鮮半島はある時代には楽浪郡という中国の一部だったわけですから)
国には国の考え方があり、国同士は争ったり寄り添ったりするのですが、それとは全く関係なく人は別の次元で争ったり寄り添ったりするのです。だから一般庶民である私達が本当に重要なのはやはりナショナリズムなのではなくアイデンティティーを持った個人個人のふれあいなのだということを良く考えないといけないということです。ナショナリズムとアイデンティティーを人は時々一緒のもののように勘違いしてしまいます。最近の例では「愛国無罪」と叫んで日本の建物を破壊して回った中国人とその扇動者です。アイデンティティー=自分が自分であることの意味、存在、立場を十分理解し、それが基盤になった上でのナショナリズムだったらそんなことにはならないはずです。自分が自分であることの意味を理解している人は、反対に相手が相手である事の意味も理解できるはずです。
そんな人間が「愛国無罪」=国を愛していれば何をしても許される、と叫びながら行進し暴動を起こしたりはしないと私は考えます。
しかし、清末以降の中国は実に難しく色んな解釈が成り立ちますし今の時代と密接に繋がっていますので、どの解釈が正しいとはいえないと思います。
しかし、ナショナリズムとアイデンティティーの問題は普遍だと思います。
今回はちょっと長編になってしまいました。
次は何が登場するかはわかりません。
最近のコメント